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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。ESSE動物病院の院長 福間です。
今日は猫の痒い皮膚病に関して書いていこうと思います。
そもそも、テーマがなぜ「痒い皮膚病」というざっくりとしたものなのかも含めて書いていきます。
「猫の痒み」とざっくり書いたのは、猫にも痒みを起こしうる(または痒みがあるように見える)病気が複数ありますが、犬と違いこれらを皮膚症状や発症部位により、これがどのような病気なのか推測することが比較的難しいんです。
なので私たちは、猫の場合問診や身体検査で病気の鑑別を絞ることは控える傾向にあります。
つまり今回の投稿もそれに倣って、猫の痒みがある時に見られる皮膚症状と鑑別しないといけない疾患を上げる形で、体系的に書いていこうと思いこのようなタイトルにしました。
まずは猫の臨床症状(皮膚症状)の種類について書いていきます。
まず猫の皮膚症状は以下の4種類になります。
この4つです。
ここでまず注意しないといけないのは、これらは病態名であって病名ではありません。
(病気の状態を「病態」といいます。例えば、「赤い直径15cmほどの球形の果物(病態名)の一つにりんご(病名)がある」というような違いです。)
つまり「診断名は粟粒性皮膚炎ですね」は的確ではなく、「粟粒性皮膚炎(病態名)が見られ、この原因は○○(病名)が考えられます」が、的確な考え方だと思います。
では次にそれぞれの説明と実際の画像を示していきます。
これは書いて字のごとく、「頭 and/or 首に引っ掻いてできた傷があります」ということです。
この写真のように首元や目の上などに、掻きこわしを作っている状態を指します。
これは痒い皮膚病の時に、結構多く見る症状の1つです。
皮膚に小さな粒々ができる症状です。
よく見られるのは耳や胴体で、特に次に書く“外傷性脱毛”とセットで発生することが多いです。
これは点での刺激が原因にあることを考えます。代表的な原因としては虫刺されなどでしょうか。
C Favrot. JFMS. 2013
これは境目がはっきりとした脱毛で、つるつるになっていることが多いです。
舐め壊すことで、毛が千切れてなくなり脱毛が起こると考えます。
お腹や足などなめやすいところにできます。
これはちょっとややこしくって、“好酸球性肉芽腫(こうさんきゅうせいにくがしゅ)”、“無痛性潰瘍(むつうせいかいよう)”、“浸潤性局面(しんじゅんせいきょくめん)”というのをまとめて、“好酸球性肉芽腫群(こうさんきゅうせいにくがしゅぐん)”といいいます。
とりあえず好酸球性肉芽腫群はいろいろまとめての呼び方だと理解してください。
C Favrot. JFMS. 2013
左の写真が“無痛性潰瘍(むつうせいかいよう)”で、右の写真が“好酸球性肉芽腫(こうさんきゅうせいにくがしゅ)”です。
無痛性潰瘍は、上唇にできる潰瘍で名前の通り痛くないそうです。
好酸球性肉芽腫は、下唇にできるしこりで腫瘍と間違われることも少なくないです。
これら二つよりも“浸潤性局面(しんじゅんせいきょくめん)”が私はよく見るのですが写真がありませんでした…
では、次にこういった写真のような見え方をする皮膚病を順に紹介していきます。
以下のようなものがあります。
です。
これらを順に説明していきます。
これはノミの寄生による皮膚炎と、ノミの唾液に対して起こるアレルギー性皮膚炎の総称です。
ノミに刺される事でそもそも痒くなるのですが、ノミの唾液に対してアレルギーを起こす体質の個体は、そのアレルギーによっても痒みが起こるので、アレルギーを起こさない子より痒みは強くなります。
皮膚表面のノミを見つけるか、ノミ糞を見つける事です。
ノミ糞はGoogle検索してみてください。
濡れたティッシュの上に置くと、赤い血の成分が滲んでくるのが特徴です。
ノミの予防薬を使う事で痒みは改善しますが、皮膚を掻き壊しているような症例には一度皮膚を改善させる目的で、ステロイドなどの抗炎症や痒み止めを短期間使用する事があります。
※ノミの予防薬は、市販品だと効かない事があります。実際、市販の予防薬やノミよけ首輪をしていてもノミをくっつくけてくる子が年に数例います。これは、市販品の予防薬に使われている有効成分に耐性のノミがいるため)
ネコショウセンコウヒゼンダニというダニが猫の皮膚の中(角質層)に寄生する事で、痒みが生じる病気です。
皮膚の中でトンネルを作って、その中に産卵や糞をします。
症状が出る場所も少し特徴があり、耳の先っぽや肘、踵などです。
これは毛の少ないところをダニが好むからという理由のようです。
スクレーピング検査をいうものを行います。
これは皮膚表面の角質を削り、それを薄く広げて顕微鏡で確認する検査です。
こうする事で、角質層に潜っているダニを見つける事ができます。
以前は2週間に1回注射を打つやり方でした。
今は新しい薬で便利なものがあり、皮膚につけるタイプの薬を使います。1回だけで治療が終了することもあります。
耳ヒゼンダニが耳に寄生することで痒みを起こす病気です。
このダニは皮膚の表面に寄生して、フケなどを食べて生活しています。
耳垢をとり、それを薄く広げて顕微鏡でダニや卵を確認します。
比較的若い猫で多いため、若い猫で耳垢が多く、そして耳を掻いていれば耳ダニを疑い検査を提案する事が多いです。
まずはしっかり掃除します。
先ほども書いたように、皮膚表面にいるのでなるべく洗い流した方が治りが早いです。
そして薬は猫疥癬と同じ薬を使いたいですが、体重によっては使いにくい場合もあるのでその時は別の皮膚につける薬を提案します。
あえてぼかす必要も無いので書いてしまうと、猫疥癬と同じ薬=ブラベクト、別の皮膚につける薬=レボリューションです。
これは字の通りで、蚊に刺されたところが過敏に反応してしまい炎症を起こしてしまう病気です。
特徴としては、顔周りによく見られ、痒く、小さなブツブツとしたしこりができることが多いです。
確定診断は難しいです。
鼻周りや耳に症状が出ていて、蚊の多い季節で特に外猫の場合はこの病気を強く疑います。
アレルギー検査も手段としてはありますが、蚊も種類があるので参考程度だと思います。
外猫の場合は、蚊の少ない屋内に移したり蚊の忌避剤などを使います。
痒みなどの症状が強く出ている場合は、ステロイドを使います。
糸状菌というタイプのカビが、皮膚や毛に感染する病気です。痒みや脱毛、カサブタが見られます。
まずウッド灯検査を行います。カビが感染している毛が光る検査で、光ればカビがいることを疑いその毛を抜いて顕微鏡で確認します。
ウッド灯で光らないカビもいるので、その場合は疑わしいところを抜いて、同様に顕微鏡で確認します。
病原性の有無を確認するために、培養検査やPCR検査を行うこともあります。
私は基本的に、抗真菌薬の飲み薬を使います。
他には塗り薬もありますし、薬用シャンプーを使ったりもします。
ウッド灯で光らなくなるまで、しっかり治療を継続することが肝心です。
ウッド灯検査の画像。青リンゴ色に光っているのが糸状菌に感染した毛です。
天疱瘡とは、体を守る防衛細胞が皮膚の細胞を攻撃して壊してしまう病気です。
結果、皮膚にカサブタができたり“ただれたり”する症状が見られます。(先にあげた、猫で多い皮膚病の症状(4種類あったやつです)とは違う皮膚病の見え方をします)
できる部位に特徴があり、論文に乗っていた好発部位に色付けされた図を下に載せます。
パーセントが高いほど、症状が多く現れる部位です。(もう少し可愛いイラストにはならなかったのでしょうか?笑)
病気の皮膚から細胞を取ってきて、顕微鏡で“細菌がいないこと”と“棘融解細胞”という特徴的な細胞が確認できれば、天疱瘡をより強く疑います。
その後、皮膚を一部切り取り調べる「皮膚病理検査」を行い、確定診断を行います。
基本的にはステロイドを使用します。
ただ減薬や休薬時に半数以上が再発したと報告されていたりするので、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を併用するなどして、ステロイドの減薬・休薬を行うケースもあります。
これは食べ物を摂取することで起こる、アレルギー反応がおきその結果として皮膚炎が起きる病気です。
現状では人ど同様の仕組みで皮膚炎がおこると考えられているのですが、詳しいことはわかっていません。
症状の出方の特徴としては、若い時に発症し、季節に関係なく痒みがあり、特に顔や頭を痒がることが多いです。
また、下痢(もしくは便の回数が6回以上/日)や吐き気などのお腹の症状が同時に見られることもあります。
診断をするのは難しく、現状では犬同様「除去食試験」を行います。
これは低アレルギーの療法食のみを与えて、皮膚炎の改善が見られるかを確認します。一般的には2ヶ月続けて、効果の有無を判定します。
猫ちゃんは食べ物の変化に敏感な子が多く、この除去食試験ができないことも多いので診断が難航することも多いです。
めちゃくちゃ美味しい低アレルギー療法食が、開発されるのを期待してしまいます。(笑
除去食試験の低アレルギー療法食で痒みがよくなれば、そのまま療法食を続けることもありますし痒みが出ない市販のフードを探してもらうこともあります。
食べ物が原因と分かれば、食事の変更のみで治すことができます。
猫の皮膚病は、まだわかっていないことが多く人や犬のようにアトピーという病態があるかはっきりしていません。
この理由は一昔前まで、アトピーと診断するためのIgE検査が猫で正確に行えていなかったためです。なので以前は猫アレルギー性皮膚炎と呼んでいた、他の病気(ノミアレルギーや食物アレルギー)が否定的な猫を、現在は“非ノミ非食物アレルギー性皮膚炎”と呼ぶようになりました。≒“猫アトピー”という理解でいいと思います。
ノミやダニ、カビや細菌がいないこと、除去食試験で改善しないことを確認し、猫アトピーと仮診断します。
猫のIgE検査も行えるようになり、IgE検査を行うのも1つのやり方ですが、犬同様確定ができる検査ではないと考えます。
猫は薬物療法がメインになります。シャンプー療法や食事療法、サプリメントがやりづらいからです。
薬は、①ステロイド、②シクロスポリン、③アポキルを使います。
①ステロイド
治療の最初に使うことが多いです。副作用は犬よりも少ないとは言われますが、糖尿病や感染症、心筋症など気をつけないといけない副作用はあるので、痒みがよくなってきたら他の薬にバトンタッチするように減薬・休薬します。
②シクロスポリン
犬同様アトピー性皮膚炎に効果があります。猫には、液体のお薬や粉のお薬を提案することが多いです。犬と違って新しいお菓子タイプのお薬は使えません。
③アポキル
本来犬用の薬ですが、使用報告も増えてきて有効性も認められてきています。犬よりも多い量を飲まないと効かない分、血球数や肝臓、腎臓に副作用が出ないか定期的に血液検査を行うことを勧めています。
これは正式な病名ではありませんが、ここではこの様に表記します。
また、これは実際は痒みはなく、痒い様に見える症状です。人が“痛いところをしきりにさする”行為と同じようなものという認識でいいと思います。
要は、何かしらの不快感があるところを気にして舐める行為が、痒いように見える、ということです。
例えば、膀胱炎の猫が下腹の皮膚を舐める、手首の関節炎のある猫が患部の皮膚を舐める、などがあります。
この症状を疑ったら、その身体的要因がないかどうかの確認を皮膚検査に加えて行います。
その結果痒み様行動の原因と思われる異常があればそこに対して治療を行い、それで痒み様行動がなくなれば「やはりこれが原因で痒い様に見えたんですね」と話します。
基本的には皮膚にではなく、その原因に対して治療を行います。
ただすでに皮膚が赤くただれるような状況の場合は、結果として皮膚に炎症が起きてしまっているので皮膚に対しても治療が必要なこともあります。
これも最初の段階で痒みはなく、ただストレスなどを落ち着かせるためにグルーミング行動をしているうちに、実際の皮膚に炎症を起こし、また脱毛もしてしまう病気です。
原因となりうるストレス(騒音、匂い、環境の変化、家族(同居動物も)との関係性、トイレの種類・数、入院など)を考えます。
また皮膚検査も行い、他の異常が起きていないか確認します。
まず他の皮膚の異常があれば、それに対しての治療も検討します。
食物アレルギーも否定できない場合は、同時に療法食も提案する場合があります。ただ1番の原因であるストレスに対しての対処が大事で、また難しいです。
まずストレスの原因が取り除けるもの(例えば、仲の悪い同居猫と生活エリアを分ける、など)であれば、取り除きます。それができない時は、なるべくストレスを減らすように対処します。
またどうしてもストレスの原因への対処が難しい場合や、それだけでは状況の改善が見られない場合は、向精神薬やリラックス効果のあるサプリ、リラックスフェロモンを使用したりもします。
※向精神薬のイメージは、一般的にあまりいいとは言えませんが、向精神薬を使うことで“猫が楽になる”ことがある、というのも事実です。必要な症例にはきちんと説明して、処方をすることもあります。
以上が猫で痒みを起こす(ように見える)皮膚病でした。
これ以外にも、まだまだ猫の皮膚病は存在します。皮膚に気になる異常があれば、一度当院までご連絡ください。電話、LINEどちらでもご連絡いただけましたら、お答えさせていただきます。よろしくお願いします。
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください